秋になると、街や山がきれいに色づき、その美しさに秋を感じる人も多いのではないでしょうか。
子供たちも、色とりどりの葉っぱを手に取って、とても喜びますね!
そんな時に聞かれる、こんな質問。
皆さまは答えられますか?今回は、この質問への答え方を考えてみましょう!
まずはやはり、葉っぱの色は、『色素』が集まって、その色に見えている!ということを伝えたいですね。
さらに
・色素が増えたり減ったり、バランスが変化することで色が変わって見える
・色素のある(できる)場所によって、同じ葉っぱの中で色の違う部分ができることがある
ことも分かってもらえるのではないでしょうか。
では、葉っぱが色づくしくみについて、ここからはもう少し詳しく説明していけたらと思います!
1.葉っぱが色づくしくみ
ここでは、葉っぱが色づくしくみについて、『もっと詳しく知りたい!』という方のために、少し科学的な説明を書いて行けたらと思います。
葉っぱの色が変わるしくみ
葉っぱの色が変わるためには、いくつかの段階があります。
まずは、それについて、簡単にまとめます!
⇒光合成が進まなくなって太陽光があまる
⇒緑色の色素が分解される(葉っぱの緑色がうすくなる)
⇒(残っている黄色の色素が目立つ)
※各色素の分解速度は植物によって異なる
⇒葉っぱの老化が進む
⇒離層が形成される(落葉の準備)
⇒葉っぱに糖がたまる
⇒赤色の色素がつくられる
⇒茶色の色素がつくられる
それぞれの段階で起こっていることを、これからもう少し説明していきます!
緑色が減って『落葉』準備が始まるまで
まずは、秋の紅葉と深い関係がある『落葉』と一緒に、葉っぱの中で起こっている現象を見ていきましょう!
緑の色素がなくなるしくみ
葉っぱでは光合成が行われ、養分が作り出されます。
言わば植物の『調理室』です。
調理(光合成)には
・食材(二酸化炭素と水)
・電気(太陽光)
・調理器具(光合成色素(主に緑色の色素)
が必要です。
秋から冬にかけて気温が下がると、調理スピード(光合成の進む速さ)が遅くなります。
そうすると、葉っぱにあたる太陽光の光エネルギーが多すぎて、光合成に関わらずに余ってしまい、これによって光合成色素(クロロフィル)は分解されていきます。
葉っぱの中の緑色の色素が減っていくので、葉っぱの緑が薄くなっていくように見えます。
落葉の準備
色素が減っていくと、
葉っぱで作られるエネルギー(養分) < 葉っぱの維持にとられるエネルギー
となり、やがて『その葉っぱは落とした方が良い』とされます。
これが落葉のきっかけとなります。
葉っぱが老化すると、根元には『離層』というコルクのような組織ができます。
離層によって、葉っぱと植物本体の間の物質の流れはさえぎられます。
そこで、少ないながらも葉っぱにまだ残っている光合成色素でつくられた養分(デンプンなど、つまり糖)や老廃物は、根っこに移動することなく、葉っぱにとどまります。
葉っぱが赤くなるしくみ
葉っぱに残ったデンプン(糖)は、アントシアニジンという物質と結びついて、赤色の色素アントシアニンの材料になります。
アントシアニン=アントシアニジン(アントシアン(色素)の一種+糖)
葉っぱが黄色くなるしくみ
『紅葉』という字があてられますが、葉っぱが赤くならずに黄色っぽくなることがありますね。
植物の葉っぱには、光合成色素として、クロロフィルの他にも黄色の色素(カロテノイドなどの色素がもともと含まれています。
普段は色素の量も緑:黄=8:1くらいの割合なので、隠れて見えません。
気温が下がり、太陽光の影響を受けやすくなると、構造が不安定なクロロフィルが先に分解されます。
クロロフィルよりも比較的安定していて、分解速度の遅いカロテノイドの色が残るので、葉っぱは黄色く見えます。
葉っぱが茶色くなるしくみ
紅葉している葉っぱに混じって(あるいは紅葉せずに)、枯れて茶色くなる葉っぱもありますよね?
茶色い葉っぱの中は一体どうなっているのでしょうか?
葉っぱの老化がさらに進むと、カロテノイドやアントシアニンも分解されていきます。
これらの物質が、細胞に含まれるタンニンと結合したり、タンニン同士が結合していくと、褐色の色素(フロバフェン)ができ、葉っぱは茶色に変化していきます。
2.植物の種類によって違う紅葉の仕方
モミジやイチョウは代表的な秋の風物詩ですが、イチョウの赤い葉っぱは見たことがありますか?ありませんよね!?
ここでは、植物によって異なる紅葉の仕方についてご紹介していきます。
植物によって七変化!色の変わり方の例
(1)葉っぱが緑色→赤色に変わる植物
クロロフィルの分解≒カロテノイドの分解≒アントシアニンの合成
全てのタイミングがほぼ同じで、同時進行。
カロテノイドだけが残る時間がありません。
クロロフィルがまだ残った状態だと、赤と緑が濁ってみえるので、クロロフィルの分解とアントシアニンの合成の進み具合によって、
緑色→赤紫色(緑と赤が混ざっている)→鮮やかな赤色
という過程を経ることが多いようです。
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植物例:ハウチワカエデ、ナナカマドなど
(2)葉っぱが緑色→黄色→赤色に変わる植物
クロロフィルの分解→カロテノイドの分解→アントシアニンの合成
順番に反応が進んでいきます。
それぞれの段階でたくさんある色素が葉っぱの色を決めています。
⇒ ⇒
植物例:トウカエデなど
(3)葉っぱが緑色→黄色→褐色に変わる植物
残っているカロテノイドが多く、アントシアニンが比較的少ないと、褐色に見える葉っぱもあります。
(4)葉っぱが緑色→黄色に変わる植物
クロロフィルの分解が進むだけで、カロテノイドの分解の進行が進みません。
また、アントシアニンの合成が進まないため、赤色には変わりません。
⇒ ⇒
植物例:イチョウ・カラマツなど
(3)紅葉しないで枯れ落ちる植物
アントシアニンが不安定ですぐに分解されてしまう植物では、紅葉は見られにくいようです。
植物例:カシワ・クヌギなど
★紅葉する樹種が多いのも日本ならではの特徴。
緑色のままの植物は?常緑樹も紅葉する!?
植物は、葉っぱの落とし方によって2つのタイプに分かれます。
落葉樹と常緑樹です。秋に葉っぱが緑のままに見えるのは、常緑樹でしょう。
・落葉樹は、毎年寒くなり始める秋ごろに葉っぱを落とすタイプです。
・常緑樹は、季節に関係なく、少しずつ葉っぱが入れ替わるタイプです。
常緑樹は秋に限らず落葉しているのですが、秋に派手に色を変えて落葉している落葉樹と比較すると目立ちません。
また、常緑樹でも紅葉するもの(葉っぱが赤色に変わるクスノキなど)もありますが、やはり目立ちません。
春に紅葉する現象『春もみじ』とは?
紅葉と言えば、秋のイメージが強いですが、春に葉っぱが赤く染まっているのを見たことはないでしょうか?
これは『春もみじ』と呼ばれる現象です。
春先の葉には、葉緑素(クロロフィル)をつくる仕組みが充分にできていません。この未熟な葉緑素と茎から運ばれた糖類など養分によって、赤い色素が作られます。
また、この頃にできる赤い色素は、春先になって増える太陽光の光エネルギー(紫外線量)から幼い新芽を守る役割※も果たします。
現象としては、紅葉と似ていますね。落葉はせず、クロロフィルが増えてくると、赤い色は消えて葉っぱは緑色になります。
また、春の新芽とは別に紅葉が見られれば、それは常緑樹がひっそりと春に紅葉しているのかもしれません。
草も紅葉?『草もみじ』を見せる植物
紅葉と言うと、山を彩る木々を連想しますが、紅葉するのは木の葉だけではありません。ここでは、葉っぱが紅葉する草(草本植物)を紹介します!
赤:イヌタデ、エノコログサ、アカザ、ヨモギ、ミゾソバ、ゲンノショウコ
黄:ヤマノイモ、チガヤ、ヘクソカズラ
3.葉っぱが色づくと植物に良いこと
葉っぱの色づく仕組みはわかったけど、葉っぱが色づくことは植物にとって何かメリットがあるのか?
いくつか考えられていることがあるので、ここではそれをご紹介します。
葉っぱが赤くなると太陽光から守られる!?
太陽光は、植物の中で養分をつくるために必要な光エネルギーをもたらしてくれて、良いイメージがありますが、植物にとって良くないこともあります。
それは、紫外線や青色の光(ブルーライト)の影響です。
日焼けのイメージで分かると思いますが、紫外線などによって植物の中で活性酸素が作られると、植物が生きていくために必要なマニュアル(遺伝子)が傷つきます。
ここでは、植物の色の変化が、この紫外線などから、植物を守るためにあると考えられているはたらきについて説明していきます。
不安定なクロロフィルは植物にとっては有害?
普段葉っぱの中で、クロロフィルは細胞のなかにある葉緑体という袋の中ではたらいています。
ところが、組織が老化してクロロフィルが細胞の外に出てくると、もともと不安定なクロロフィルは葉緑体などに守られず、紫外線にさらされます。
紫外線を吸収してクロロフィルが分解されると、活性酸素が作りだされてしまいます。
葉っぱが赤くなると、植物が太陽光から守られる!?
ちょうど同じ頃に、赤い色の色素(アントシアニン)が作られますが、この色素が紫外線などを吸収する働きがあります。
(正確には、紫外線に近い青色の光を吸収するので赤く見えるわけですが…)
この赤色の色素が紫外線などを吸収することで、クロロフィルに直接青色の光が当たらず、活性酸素も作られにくくなります。
こうして植物は、赤色の色素によって有害な物質から身を守ることができるといわれています。
葉っぱが赤くなると害虫から守られる!?
赤色の色素を作るためには、それなりにたくさんのエネルギーを必要とします。
植物の葉っぱが赤くなることで、『赤色の色素を作るだけのエネルギーがある自分には、虫の食害に対して抵抗する力があるぞ!』と(植物が意図したわけではないでしょうが)、アブラムシに対する警告となり、結果的に食害を防いでいるとの説もあるようです。
4.葉っぱが色づく条件
秋に見られる紅葉は、どのような環境を植物が感知して始まっているのでしょうか?ここでは、具体的に分かっている数値などを中心に、葉っぱが色づくときの条件について書いていきます。
①気温の条件
・1日を通して(特に朝の)最低気温が8℃前後より低くなった状態が20~25日間続く。
・昼(20~25℃)と夜(5~10℃)で気温差(15℃くらい)があり、特に夜に急激な冷え込みがある。
昼は、温度が高い方が光合成が活発に行われて養分がたくさんつくられます。
逆に、光合成をしない夜は、温度が低い方が呼吸などで養分をあまり使わなくて済みます。
その結果、葉っぱに蓄積される養分が多くなり、合成されるアントシアニンが増えるのでしょう!?
②日照時間(太陽の光が当たっている時間)
・たっぷり日を浴びる!
・昼間の時間が短くなることで色づき始める。
昼は、太陽の光がたくさんあたっている方が光合成が活発に行われて養分がたくさんつくられ、結果的に合成されるアントシアニンが増えます。
昼間の時間と紅葉に関係があるのは、季節変化や温度低下と関係があるからだと解釈できます。
③水分状態の条件
・葉が枯れないくらいの適度な湿度がある。
・それでいて、降雨が少なく、地中がほどよく乾燥する。
湿気や乾燥によって、赤や黄色になる前に枯れて茶色になってしまわないかどうか、が鍵を握っているようです。
日本では、これらの気候条件が全て揃う地域が多いため、全国的に紅葉狩りを楽しめるのだそうです♪
5.【まとめ】紅葉の色づきは色素のバランスが鍵!
紅葉のしくみについて少し勉強できてから眺める紅葉の景色はいかがでしょうか?
植物に親近感がわきませんでしたか?
感傷的な変化の裏に、すごく現実的な理由があって、そのギャップが面白いですよね。
紅葉の色づきについて、最後にまとめておきます♪
1.葉っぱが色づくしくみ
・葉っぱが赤色になるのは、緑色の葉っぱに含まれている緑色の色素(クロロフィル)が役割を終えて分解されるときに、赤色の色素(アントシアニン)が作られるから
・葉っぱが黄色になるのは、緑色の葉っぱに含まれている緑色の色素(クロロフィル)が分解されて減り、黄色の色素(カロテノイド)が残って目立つから。
2.植物によって違う紅葉のしかた
植物によって、色素が分解・合成される速さがそれぞれ異なることで、いくつかの色素が混ざったり、目立つ順番が変わったりして、葉っぱの色にも特徴が表れる。
3.葉っぱが色づくと植物にとって良いこと
葉っぱが赤いと、植物にとって有害な物質(活性酸素)をつくりだす紫外線などが吸収されると同時に、外部のアブラムシへ耐性(食害への強さ)を示すシグナルとしても植物を守る働きがあるという説がある。
4.葉っぱが色づく条件
気温・日照時間・水分状態が平均的な「日本の晩秋」の気候だと思えば良いでしょうか。雨が降りすぎたり、乾燥しすぎたりしないこともきれいな紅葉の条件ですね。
親子で紅葉を楽しむヒントが得られると嬉しいです♪
みんなで紅葉狩りに出かけましょう!
6.子供と一緒にやってみよう!
紅葉の現象の不思議について学べたら、それが実感できる方法で、子供と一緒に簡単な実験・観察をしてみましょう!
葉っぱの一部を隠したら、色のつき方は変わる?
①よく日の当たる場所で落葉広葉樹を見つけます。
※自分の家の庭の木など実験しても良い木を使いましょう。
※学校や公園などの木の場合は、許可をもらってから行いましょう。
②それが紅葉する種類かを事前に確かめたり調べたりします。
(植物の名前も調べられたらいいですね!)
③葉の一部を覆って、太陽の光が当たらないようにします。
(アルミホイルやシールなど、光が通らず、長い間とれないものを使います。)
④周りの葉っぱが紅葉し始めたら、覆いを外します。
・色は違っていましたか?
・どのように違いましたか?
・どうして違っているのでしょう?
子供と一緒に考えてみましょう!